─ 今月のこの花 2010年2月 チューリップ ─
大きな花弁の中に何かを隠しているようなチューリップ。
デンマークの童話作家アンデルセンは『おやゆび姫』でチューリップから生まれた女の子の物語を描き、昭和初期に活躍した俳人、松本たかしは「チューリップの花には侏儒(コビト)が棲むと思ふ」という句を残しています。
「一人ぼっちの女性のもとに贈られた魔法の種。その種はやがて花を咲かせ、花の中には小さな女の子の姿がありました」。
童話「おやゆび姫」の冒頭部分ですが、おやゆび姫が出てきた花はチューリップだったということを、皆さんはご存知でしょうか。
この物語の作者はハンス・クリスチャン・アンデルセン。旅を愛した彼は、30歳の時にイタリア旅行の体験をつづった「即興詩人」を書き、作家として認められます。その後「おやゆび姫」「人魚姫」「みにくいあひるの子」「はだかの王さま」など多くの童話を書き、70歳で亡くなるまでに150編あまりの童話を発表しました。
アンデルセンの物語は彼自身の人生の投影でもあるといわれています。「おやゆび姫」のストーリーに「愛」という花言葉を持つチューリップを登場させたのも、アンデルセンが20代の頃に経験した恋愛や旅での思いを映し出しているのかもしれません。